理事長挨拶

理事長挨拶

山本 一博

鳥取大学医学部 循環器・内分泌代謝内科
山本 一博

このたび第7代理事長に就任いたしました山本 一博です。本学会は1989年11月に設立されて以降、吉川 純一先生、宮武 邦夫先生、別府 慎太郎先生、吉田 清先生、竹中 克先生、中谷 敏先生と心エコー図学の領域で大きな業績を残してこられた偉大なる先生方が歴代の理事長を務めてこられ、この度そのバトンを引き継ぐこととなりましたこと、身の引き締まる思いであり、大変プレッシャーを感じております。
 ここで、学会と医療のかかわりについて、私の思う所を述べさせていただきます。野村克也氏は「野球は気力1分、体力1分、残り8分は頭」と言われ、これを実践することで名選手、名監督、そして名教育者としての実績を残されました。野球をはじめとするスポーツでは体力や技術が結果を左右すると思われがちな中で「考えること」が実は最も重要であることと同じく、医療もサイエンスですから小手先の技術などより「考えること」がはるかに重要なはずです。考えを深める機会を研究は提供し、考えるきっかけを提供するのが教育であり、この両者の推進を通じて医療・医学に貢献することが本学会の大きな使命だと思っております。

研究の推進への貢献

本学会が担うべき最大の役割は研究の推進を通じた診療への貢献であると思います。
 心エコー図は循環器内科、小児循環器科、心臓血管外科のみならず多くの診療科でも必要とされている臨床上のツールです。近年は高齢の患者さんが増え、心疾患合併率が高くなり、非心臓疾患の診療においても合併する心疾患への対応が求められることが増えています。また悪性腫瘍に対する薬物療法では心機能障害が一定の頻度で発生するなどの問題もありonco-cardiologyという分野が新たに構築されています。これらの診療では、まずは心エコー図による評価が診療の入り口になっています。
 このように心エコー図は広くルーチンで用いられておりますが、成熟しきった分野とは言えません。まだまだ進歩が望まれる領域が残っている、unmet needsが存在することから、研究の継続が望まれます。研究の継続による成果が新たな道を開き医療レベルの向上に寄与することは論を俟ちません。一方で、このような研究成果だけではなく、研究の過程において考えdiscussionすることも重要であると思います。データを深く読み込み考えを巡らせることは、研究成果を得ることができるか否かとは関係なく、心エコー図のデータの解釈力をより深めることに結び付くと思いますし、それが日常診療に活かされると、診療レベルの向上にも結びつくはずです。
 また、研究とは、questionを掲げ、事実を積み上げることで整合性のあるストーリーを考えながら答えを導くことであり、これは日常診療で患者さんに対する診療アプローチで求められる過程と同じです。研究を通じて、この能力にさらに磨きをかけていただければ、皆様自身のレベルアップにも結び付くと信じております。
 本学会は、診療レベルの維持と向上に必要不可欠な研究推進のお手伝いを目指しています。学会が開催する学術集会は、研究を行っている医療人が集い、discussionを重ねて考えを深めあいながらお互いの知見を高め、研究の推進に寄与する場であると思いますので、多くの方に参加していただくことを願っております。また、研究成果を海外も含めた多くの人にシェアしてもらい議論を深める機会を広げると同時に、未来永劫までその成果を残すことは論文化によって可能となります。本学会にはJournal of Echocardiographyという英文誌があります。現在活躍する医療人のみならず将来の医療人がいつでも参照し考える機会を得ることができるよう、皆様の研究成果を本誌に投稿していただければと思います。

教育への貢献

「教育の目的は、各人をして自己の教育を継続させることである」(ジョン・デューイ)とあり、学会には、自己研鑽を積まれている医療人への情報提供を通じて教育に貢献することが求められていると思います。そのような場として本学会では学術集会に加え、年4回の講習会を開催しております。講習会の中では、エビデンスとして確立していること、すぐに明日から使える情報、技術をお伝えすることにとどまらず、いまだ議論の最中にあるようなテーマも取り上げるなどして、聴講された方々に色々と考えていただくきっかけを提供できるようにしております。これは、皆様が日々の診療を行われる中で、患者さんに多方向からアプローチする一助になるものと信じております。2020年の夏期講習会はwebでのライブ配信を取り入れ、なかなか講習会場まで足を運んでいただくことが難しい遠方の方々にも聴講していただける体制を構築するなど、今後も広く情報提供ができる方策を取り入れていきたいと考えております。

 皆様が医療人として成長を模索される中で、そのお役に立てる学会となるように理事長として務めてまいりますので、ご支援とご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

2020年4月

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